広島高等裁判所松江支部 昭和34年(ネ)67号 判決
控訴人
青山利一
外五名
代理人
片山義雄
訴控訴人
内藤金之助
代理人
草光義質
主文
原判決中境界確定訴訟部分を取消す。
被控訴人の境界確定の訴を却下する。
原判決中損害賠償請求訴訟部分を左のとおり変更する。
控訴人等は連帯して被控訴人に対し、金八万七三八二円四〇銭及びこれに対する昭和二八年三月三日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
被控訴人のその余の請求を棄却する。
本件附帯控訴を棄却する。
訴訟費用は第一、二審を通じてこれを八分し、その七を被控訴人の負担とし、その余を控訴人等の連帯負担とする。
被控訴人において、控訴人等に対しそれぞれ金三万円の担保を供するときは、右金員支払部分に限り、当該控訴人に対し仮りに執行することができる。
事実
控訴代理人は「原判決中控訴人等敗訴部分を取消す。被控訴人の請求を棄却する。附帯控訴を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は「本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人等の連帯負担とする。」との判決及び附帯控訴として「原判決中損害賠償請求部分を左のとおり変更する。控訴人等は連帯して被控訴人に対し、七二万三四三九円(当審において三六万円請求拡張)及びこれに対する昭和二八年三月三日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。附帯控訴費用は附帯被控訴人等の連帯負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求めた。<以下省略>
理由
先ず境界確定訴訟について案ずる。
松江市西生馬町字冥加六〇八番の五山林六反五畝及び同所同番の六山林五反七畝二六歩が被控訴人の所有であり、これらの山林が控訴人等外七一人共有の島根県八束郡鹿島町大字名分字才の奥一四三三番山林三町七反六畝二九歩及び控訴人等外二五人共有の同所一四三四番山林二反八畝と境を接していることは当事者間に争いがない。
然しながら、境界確定訴訟においては隣接地の一方又は双方が共有地である場合、共有者は全員が共同してのみ正当なる当事者となり得るものと解すべきであるところ(雉本朗造著民事訴訟法の諸問題九六頁以下参照)、右控訴人等所有山林が共有地であり、しかも被控訴人が共有者全員を相手方として本件境界確定の訴を提起しなかつたことは当事者に争いのないところであるから、右訴は不適法というべきである。よつて原判決中右訴の部分を取消しこれを却下する。
次に被控訴人の損害賠償請求の点について案ずる。<以下中略>
以上の次第で、本訴損害賠償請求につき右判断と一部符合しない原判決は変更さるべく、又附帯控訴は理由がないので棄却さるべきである。
よつて民事訴訟法第三八四条第一項第三八六条第九六条第九二条第九三条第一項但書第八九条第一九六条に則り主文のとおり判決する。(裁判長裁判官高橋英明 裁判官竹村寿 干場義秋)